- 村上春樹の英語版小説を読んでみたい
- 洋書多読で楽しく勉強したい
- ギフトになるオシャレな英語の本を探している
こんな方を対象にした記事です。
英語で読む村上春樹、初心者にもおすすめの短編絵本【レビュー】
世界中で愛されている日本の作家、村上春樹。2015年、彼自身が長らく英語版の海外販売を認めてこなかった『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』が発売されたことにより、すべての小説の英語版が正式に出揃うこととなりました。
村上春樹作品の英語はどれも読みやすいので、これから洋書を読み始める人にもおすすめ。ただ慣れていないうちから長い本に手を出すと地獄を見ます。私なんかは4ページ読むだけでへとへとになっていたので……。
そこで今回レビューするのは、短編絵本『ふしぎな図書館』の英語版『The Strange Library』。装丁から紙面までデザインも素晴らしく、前述したように英語初心者の方はもちろん、上級者の方も読みものとして楽しめる作品です。
The Strange Library
(ハードカバー/🇬🇧UK)
The Strange Library
(ペーパーバック/🇺🇸US)
一体どんな本なのか、その特徴を見ていきましょう。
Contents
The Strange Library(ふしぎな図書館)とは
絵本のもととなったのは『図書館奇譚』。1983年刊行の短編集『カンガルー日和』に収録された短編小説です。
その後、2005年に『ふしぎな図書館』として、佐々木マキによるイラストで絵本化。2008年には文庫版も出版されています。
この英語版が『The Strange Library』。Ted Goossenの翻訳により、UK版のハードカバーと、US版のペーパーバックが販売中です。
- ハードカバー/🇬🇧UK:88ページ
- イラスト:Suzanne Dean
- 出版社:Harvill Secker (2014/12/2)
- 言語:英語
- 発売日:2014/12/2
- 商品の寸法:13.5 x 1.3 x 20.5 cm
- ペーパーバック/🇺🇸US:96ページ
- イラスト:Chip Kidd
- 出版社:Knopf (2014/12/2)
- 言語:英語
- 発売日:2014/12/2
- 商品の寸法:14.1 x 0.9 x 21.3 cm
ちょっぴりこわい非日常的なストーリー


物語は、ファンタジックで、ホリフィックで、ノスタルジック。村上春樹お得意、現実と非現実が交錯する世界で繰り広げられる、まさしく「ふしぎな図書館」のお話です。
あらすじ
主人公「僕」がいつものように図書館へ本を借りに行くと、貸出カウンターには見慣れない中年女性が。言われるがまま階段を下り、存在することも知らなかった地下室へ行くと、今度は老人に奥の部屋へと通される。閉じ込められた「僕」は、羊男や美少女と出会い……。
村上春樹が苦手という人の中には、短編なら読めるという人も多いですね。英語だと良くも悪くもさらにクセが抜けるので、それこそ全員におすすめできます。
ページ数が少なくチャプターが多い
どのくらいの時間で読み切れるのか、読了時間の目安がわかるウェブサイト「Reading Length」を使って調べてみました。




日本人の大学生が英文を読むスピードの平均値「100WPM」で計算してみると、だいたい一時間半で読めるとのこと。わからない単語やフレーズを調べながら読み進めたとしても、そんなに時間はかかりません。
また、26個のチャプターに分かれているため、少しずつ読み進めるのもいいですね。長い英文を一気に読めない方でも安心です。
初心者から上級者まで対応の英語レベル
英語レベルはそれほど高くありませんが、初心者の方には少し見慣れない単語も多いかもしれません。例として冒頭を見てみましょう。
The library was even more hushed than usual.
『The Strange Library』チャプター1の冒頭より
My new leather shoes clacked against the gray linoleum. Their hard, dry sound was unlike my normal footsteps. Every time I get new shoes, it takes me a while to get used to their noise.
Weblioで調べると、ここでは「hushed(静かな)」は「レベル6(英検:準1級以上、TOEIC L&Rスコア:730点以上)に設定されています。
ちなみに「linoleum」は「リノリウム」。小説ではたびたび出てくる床材の一種ですね。
そのほか、ぱっと目に入った難易度の高めなワードはこんな感じ。
中上級の単語・フレーズ
- sneer(レベル7):あざ笑う
- mackerel(レベル11):サバ
- slurp(レベル13):すすって飲み食いする
- go bananas(レベル24):狂う
- flyswatter(レベル24):ハエたたき
中上級者でも知らない英語はいくつか出てきそう。とはいえその数は少ないので、初心者の方も辞書を片手に読んで苦にはならない程度だと思います。
ギフトにもなるデザイン性の高い装丁
UK🇬🇧のハードカバー版についてです。
イギリスの出版社・ヴィンテージ・ブックスのクリエイティブ・ディレクター、Suzanne Deanによるデザイン。
[sanko href="https://literary007.com/2014/10/01/exclusive-interview-with-suzanne-dean-creative-director-for-random-house/" title="Exclusive Interview with Suzanne Dean, Creative Director for Random House" site="Artistic Licence Renewed" target="blank"]ハードカバーの表紙の色は画像よりも淡いですが、ぱっと目を引くピンク紫。水色の部分は図書カード入れがモチーフとなっており、袋状になっているため、ギフトの際にはメッセージカードなどを入れることもできます。


出版社の名の通り、全体的にはヴィンテージ感のあるデザインで、どのページもそれだけで独立したポストカードになり得そうです。
物語とイラストが絡み合う構成
引き続き、UK🇬🇧のハードカバー版について。
文章や内容は大人向けですが、絵本なので紙面はもちろんオールカラー。物語はイラストと共に展開されます。


上の画像は、7つの見開きページが掲載されているチラシ。ここに含まれている「Quick, now.」なんかは、本文とイラストが見事に融合している例ですね。
そのほか「"But it's pitch black,"」という台詞のページは実際に“真っ黒”だったり、視覚的な刺激があるので、英文もかなり読みやすく感じられると思います。
オーディオブックでリスニング練習にも
Amazonの「Audible」には英語版のオーディオブックがあるので、リスニングの練習にも最適。こちらの再生時間は一時間。空き時間に聴くもよし、繰り返し聴くもよしの丁度いい長さです。
ちなみに「Audible」無料体験では「1コイン」もらえるので、好きなオーディオブックを1冊無料で楽しむことができます。1か月以内に解約すれば費用は一切かかりません。
私も登録していますが、一度試してみる価値はありますので、気になった方はお試ししてみてください。


ちなみに正式なメンバーになると、月に1回もらえるコインを使って好きなオーディオブックをダウンロードしたり、追加料金を払って購入することができます。
いかがでしたでしょうか。ぜひ『The Strange Library』を英語の勉強やギフトに活用してみてください。